妄想　創造日記　6月11日/2012　(月)

　6時半・・・いつも通りの目覚め、半身を起こし眠気眼を擦りながら壁に立てかけたカレンダーに目を向けた。
太いマーカーペン、強い筆圧で描かれた赤い○に囲まれた日付・・・。
　少し前の朝には心地よい春の光風が頬に吹きつけたものだが、ここ数日は梅雨の影響もあるのだろう、
湿気と熱を含んだせっかちに夏めく風が吹き、気の早い初夏の到来を告げようとしているかのようだった。
　　
　6月11日(月）晴れ。いよいよ仕事の初日を迎えていた。


　工場は自転車で30分の距離にある。9時からの業務、必要以上に慎重な性格の私は8時には
家を出れるよう考え朝の準備に取り掛かる。　

準備といってもそれほど時間の掛かるものではない。頭髪は短髪な上に先天的くせ毛、
さらに剛毛でもあるため24時間ヘアースタイルは大仏様の如く不動の型を保っている、
雨にも負けず風にも負けず・・・つまり寝癖とは無縁なのだ。

洗顔を終えたら新聞を広げ簡単に世の中の動向に目を通す。とは言っても実際読むのは
せいぜい三面記事・スポーツ記事・日替わりコラムくらいである。

朝食は約5年前からインスタントコーヒーのみ、特にこだわっている訳ではないのだが
長年の習慣が当たり前のライフスタイルとして喉と胃にすっかり溶け込んでいる。

脂肪でコーティングされた肉体環境がお洒落というものから遠ざけファッションは実に適当である。
ピーコさんにチェックされたらなんて言われるだろう・・・というような危惧妄想が生まれることもなく、
洋服ダンスから服を取り出し着替えていく。　
胸元にMONKEY LANDとロゴされたグレイの袖ありＴシャツ、BIG JOHNのジーパン、
今日のコーディネートはこれで決まりだ。
　
　いつでも出発できる状態、時計の針は７時15分をさしていた。
この時間になると家族がのろのろと顔を合わせ始めるのだが低血圧一家であるため寝起きの
テンションは非常に低い。
特に会話は生まれず、テレビで流れる報道番組の内容は頭をかすめるだけだが音はよく耳に入る。
愛猫のトキの鳴き声がその音に重なるのに反応し改めて時計に目を向ける。
そうこうしてる間にもう出発する時間になっていた。
玄関前に既に用意していたリュックサックを背負い、母からの「いってらっしゃい」の声には振り返らず
右手を上げて対応、ドアを飛び出した。

赤いママチャリにまたがり勢いよくペダルを踏み込んだ・・・。

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